雪の降る日
不確かで、曖昧な、約束とも呼べない約束。

今の春花は、それに縋って生きている。

ガチャリ、と玄関が開く音がした。

春花は慌てて立ち上がり、缶を片手に自分の部屋に駆け込む。

「ただいまー姉ちゃん、腹減ったー」

あっけらかんとした弟の声を聞き流しつつ、まだ完全には乾いていないおしるこの缶を、大切に机の上に置く。

遠くないうちに消える繋がりでも、なかったことにはならないのだ。
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