雪の降る日
曇天である。

灰色の雲。降りそうで降らない。朝からずっとだ。

「春花ー! 一緒にかーえーろー」

「……いいよー」

嬉しそうに抱きついてくる梨々奈を抱きしめ返し、春花はため息を飲み込む。

雪の日以外は、神社に行かない。あの人がいないとわかっているのに行っても、虚しいだけだから。

「クレープ! 食べに行こうよ! 久しぶりに!」

「いいよー」

「誉もー!」

「私はいいけど。春花、ほんとにいいのか」

二人にはあの人のことは話していない。雪が降る日は一緒に帰れないとだけ。

誉はなにか勘づいている気配があるが。
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