雪の降る日
古びた神社に辿り着くまでに、牡丹雪はますます勢いを増して降ってきていた。
黒髪にちらちら雪が落ちている。肩に届かない長さの、ややくせっ毛の自分の髪は、走ってきたので乱れてしまった。
道端でもたもたと手ぐしで直し、マフラーも巻き直す。
コートのポケットからリップを取り出して、そっと唇に乗せる。
ふっ、と息を吐いてから、神社の敷地に足を踏み入れた。
小さな神社だ。古びた社。その屋根の下、賽銭箱に寄りかかるようにして、彼がいた。
「あ。──こんにちは」
「──こんにちは」
彼は爽やかに笑う。茶色の髪。染めているのだと思う。紺色のマフラー。よく似合っている。
こんにちは、の一言を、毎日練習している春花なんて、きっと恋愛対象なんかじゃない。
黒髪にちらちら雪が落ちている。肩に届かない長さの、ややくせっ毛の自分の髪は、走ってきたので乱れてしまった。
道端でもたもたと手ぐしで直し、マフラーも巻き直す。
コートのポケットからリップを取り出して、そっと唇に乗せる。
ふっ、と息を吐いてから、神社の敷地に足を踏み入れた。
小さな神社だ。古びた社。その屋根の下、賽銭箱に寄りかかるようにして、彼がいた。
「あ。──こんにちは」
「──こんにちは」
彼は爽やかに笑う。茶色の髪。染めているのだと思う。紺色のマフラー。よく似合っている。
こんにちは、の一言を、毎日練習している春花なんて、きっと恋愛対象なんかじゃない。