雪の降る日
彼は微笑んだままなので、春花はゆっくり社に近づく。

どきどきして、正面から彼を見れない。

「今日は寒いねー」

言いながら一歩奥に下がり、彼は春花を手招きした。

また鼓動が跳ねる。

平静を装ってマフラーを引き上げる。

頬に熱が集まる。

「……ありがとうございます」

屋根の下は、舞い落ちる雪がないからだろう、寒さがましになった。

「ねえ、おしるこあるんだけど、どう?」

「えっ」

「小豆嫌い?」

「いや、す……嫌いじゃないです。ありがとうございます」

「よかったー。ほい」

変わらないにこにこ顔で、彼が缶のおしるこを手渡した。

ありがとうございます、と口の中で再び呟く。
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