君という名の広い空
チャイムが鳴ってから、教室で授業があったけど、気にしなかった。
いつも通り。
ただ、春哉が一度も目を合わせてくれなかった。
一言も話してくれなかった。
その時、気付いたんだ。
春哉は本当にあたしの事なんて見ていない。
だから、あたしも春哉と目を合わせようとしなかったし、話そうともしなかった。
多分、それでいいんだと思う…。
だから、チョコなんてあげない。
もう、アピールとか、なんにもしない。
「優、春哉とケンカしたの?」
皐月が小声で言った。
『ん〜また、後で話すね。』
「俺にも、話せよ。いつでも頼っていいから。」
優也…。
暗い気持ちだからこそ、その言葉は今のあたしにすごくしみた。
優也が愛しく思えた。
今だけだけど…。
『ありがと。優也。』
春哉の方をチラッと見ると、なんか怒ってる感じ。
『春哉。』
「あぁ?」
やっぱり──…
なんか寂しいよ。
でも、これは言っとかないと…。
『あたし、春哉にチョコあげんのやめた。春哉にあげるくらいなら…自分で食べるからっ!!』
春哉は、一瞬驚いて、
下を向いた。
「別にいいよ。結那から貰うし!!」
『なっ…あっそ!!』
結那に貰う!?
それ一番腹立つから。