君という名の広い空



「そんなの、気にすんな。 俺から結那に言っとくから…。 ごめんな。」
『本当に? じゃあ、話しても大丈夫?』

いつの間にか、泣き止んでいた。
「だいじょうブイ! な? 俺ら毎日話してんのに、いきなり話すなーなんて結那も酷いよな。」

やっぱり昔の春哉だ…。
いつの間にかあたしは、昔の春哉と今の春哉を比べて、今の春哉は昔と変わったって勝手に思っていた。
けど、違う。
全然変わってないんだ。

あたしは、自転車から転がり落ちた紙袋を取って、手紙を抜き、春哉に渡した。
まだ、気持ちを伝えるのはゆっくりでいいかなって思ったんだ。
だから、ケーキだけ…渡したかった。
今はそれで満足だった。

『春哉…これ。』
こうやって、バレンタインデーに春哉にチョコを渡すのは小学生以来かな?

ちょっと恥ずかしいな。
『言っとくけど、義理だからね!』
余計な事を言ってしまったな…。
「…チョコ?って…中身ヤバい事になってるけど…。(笑)」
『へ!?』
中を見ると、せっかく一生懸命作ったケーキがイビツな形に崩れていた…。
『あぁー!さ…最悪。さっき自転車から落ちたから…。』
こんなの食べてもらえないじゃん…。
「いいよ!食うから。」
そう言うと春哉は、ケーキを一口食べた。

『…おいしい?』
「ん?」
『え!?まずかった…?』
「うまいうまい〜」



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