君という名の広い空
自分で気付いた時には、もう優也の腰に手をのばしていた。ていうか、抱き締めていた。
今までのあたしなら、優也の事なんて、友達としか見ていなかった。もしくは、頼りになる相談相手。
でも、この時のあたしの気持ちは、そんな感情ではなかった事は確かだ。
だからって、何の感情なのかも分からない。
自分が分からない。
「…。」
優也はいきなりのあたしの行動に驚いていた。
そうだよね。
いくら友達同士でも、異性だもん。
びっくりするよね。
でも、そう思っていても、手を離せなかった。
…違う。
優也の腰にまわした手を…
離したくなかった。
だって、落ち着くから──…
小学生の時とは違って、優也の背中が大きく見えるし、こうした方が暖かいし…なんか…何て言うの?
…本能?
『ね、こっちのが暖かいから、このままでいていいかな?』
確認してみた。
優也が嫌がってたら…このままじゃ、ダメだから…。
「…おう。」
優也は恥ずかしそうに言った。こういうの慣れてない…って感じ。
結局、あたしが優也に家まで送ってもらうまで…腰にまわした手は離れなかった。
そして今日、あたしは自分の気持ちが分からなくなった。