クローバー~約束~
顔合わせ前のドキドキランチ
運ばれてきた飲み物を飲みながら、美穂と和希は、話に花を咲かせていた。
「そっか、いずりんちゃん、東中野に住んでいるんだ。ご実家?」
「うん。生まれてからず~っと住んでて、出たことないの。ちょっと過保護なのかな、1人暮らしの必要ないでしょう?って母に言われて」
「東中野なら、便利だから確かに必要ないよ。でも、不自由?」
「う~ん。飲み会とかで遅くなると、ちょっと言われるのが苦痛、と言えば苦痛。でも、あとは比較的自由にさせてもらってるから。カズキくんは、出身、福岡?」
「あぁ。福岡もいいところだけど、大学の質で言うとやっぱ東京かな。一応、慶応大学文学部出身なんだ」
慶應・・・すごい。頭もいいし、おぼっちゃんなんだ。本も好きなのかな。
「あっ、今、『おぼっちゃん』って思っただろ?結構、苦学生だったんだぞ。バイトも沢山したし。レポートも多いし、大変だった」
「違う、違う、頭いいんだなぁ、って思ったの。絵と写真が趣味って言ってたけど、本も好きだったの?」
「本は、それなりに好きだけど、滅茶苦茶、ってわけじゃない。自分でも、なんで文学部選んだのかな、って思うくらい。在学中に本読み過ぎて、今はほとんど読まないかな。いずりんちゃんは?」
「恋愛小説は、好きだけど。唯川恵とか江國香織とか」
「そのへんは、読んだことないなぁ。」
「男の人は、あんまり読まないんじゃないかなぁ。」
カルボナーラと小皿2枚が運ばれてきた。
「いずりんちゃん、洋服、よごさないようにね」
「私、そんなにぽや~っとしてるように見える?」
美穂は、ぷぅ~っとふくれてみせる。拓也にも、よく言われたことだ。
「だって、今日は、大切な顔合わせだろ?気にしたならごめん、でも気を付けて」
「ありがとう・・・」
カズキくんは本当にあたしのことを想って言ってくれたんだ。ちょっと反省。和希が、カルボナーラを取り分けてくれる。ひとくち。
「わぁっ、おいしいっ!」
何種類?のとろぉりととろけたチーズと卵黄の混ざり合ったソースに黒コショウが効いていて、とてもおいしい。
「だろう?ここの看板メニューなんだ」
しばし、無言で食べ続ける。そのくらい、おいしい。
食べ終わってウェイターが皿を下げに来て少ししたころ、ボロネーゼをウェイトレスが持ってくる。びっくり。絶妙なタイミングだ。
「・・・ずっと、見ていたのかな?」
美穂は不思議に思う。あまりにも、パーフェクトなタイミング。和希は、美穂が不快になってしまったのか、と少し心配になった。
「違うよ。シェフの長年の勘、っていうのかな。そういうので、だいたいのタイミングは分かるらしい。まぁ、ギリギリまで作っておいて、皿を下げた時点で仕上げるんだけど」
「詳しいね、カズキくん」
「あ、昔ここで、ウェイタ―してたから」
うわっ、まずっ。バイト先以外、他の店を知らないダサい奴だと思われたかな、と和希は思う。
「へぇ~、そうなんだ。」
・・・予想外に美穂の反応は素直だ。気にし過ぎなのも僕の悪い癖だな。ボロネーゼを2つの皿にシェアする。
「だから、そんな風に自然に分けてくれるの?」
「まぁ、ね。取り分けてください、っていうお客さまもいたから。とりあえず、食べよ、食べよ!!」
ボロネーゼも、おいしい。ひき肉とトマトソースがこっくりと調和している。
「忘れてた。パルメザンチーズ、いる?」
「ううん、なくても美味しい。」
「バレる前に言うけどさ、CLOVERでも、僕、バイトしてたんだ。食べることがすごい好きで、食べ物屋でバイトすることが多くてさ」
食べることが好きなのは、美穂もいっしょだ。拓也は確かにグルメではあったけど、高級店を食べ歩いて批評する感じだったから、すこしついていけなかったんだよね。
「今も、食べ物屋さんでバイトを?」
「いや、今は・・・青山の、Sienaって宝石店で店員してる。勉強も兼ねてね」
あぁ、だから、メアドがSiena。あのレストランに関係していたら、どうしようかと思ってた。美穂のほっとした顔が気になったのか、和希が
「どうかした?」
「ううん。いつか、カズキくんのバイト先にも行ってみたいな、と思って」
「そうだね、いつか。そろそろ行こうか」
約束通り、会計を割り勘――とはいっても、和希の方が少し多く出したがーーにして、店を出た。大江戸線に乗って、新桜台へ。
駅から、歩いて5分ほど。商店街の中央あたりにCLOVERは、あった。
「そっか、いずりんちゃん、東中野に住んでいるんだ。ご実家?」
「うん。生まれてからず~っと住んでて、出たことないの。ちょっと過保護なのかな、1人暮らしの必要ないでしょう?って母に言われて」
「東中野なら、便利だから確かに必要ないよ。でも、不自由?」
「う~ん。飲み会とかで遅くなると、ちょっと言われるのが苦痛、と言えば苦痛。でも、あとは比較的自由にさせてもらってるから。カズキくんは、出身、福岡?」
「あぁ。福岡もいいところだけど、大学の質で言うとやっぱ東京かな。一応、慶応大学文学部出身なんだ」
慶應・・・すごい。頭もいいし、おぼっちゃんなんだ。本も好きなのかな。
「あっ、今、『おぼっちゃん』って思っただろ?結構、苦学生だったんだぞ。バイトも沢山したし。レポートも多いし、大変だった」
「違う、違う、頭いいんだなぁ、って思ったの。絵と写真が趣味って言ってたけど、本も好きだったの?」
「本は、それなりに好きだけど、滅茶苦茶、ってわけじゃない。自分でも、なんで文学部選んだのかな、って思うくらい。在学中に本読み過ぎて、今はほとんど読まないかな。いずりんちゃんは?」
「恋愛小説は、好きだけど。唯川恵とか江國香織とか」
「そのへんは、読んだことないなぁ。」
「男の人は、あんまり読まないんじゃないかなぁ。」
カルボナーラと小皿2枚が運ばれてきた。
「いずりんちゃん、洋服、よごさないようにね」
「私、そんなにぽや~っとしてるように見える?」
美穂は、ぷぅ~っとふくれてみせる。拓也にも、よく言われたことだ。
「だって、今日は、大切な顔合わせだろ?気にしたならごめん、でも気を付けて」
「ありがとう・・・」
カズキくんは本当にあたしのことを想って言ってくれたんだ。ちょっと反省。和希が、カルボナーラを取り分けてくれる。ひとくち。
「わぁっ、おいしいっ!」
何種類?のとろぉりととろけたチーズと卵黄の混ざり合ったソースに黒コショウが効いていて、とてもおいしい。
「だろう?ここの看板メニューなんだ」
しばし、無言で食べ続ける。そのくらい、おいしい。
食べ終わってウェイターが皿を下げに来て少ししたころ、ボロネーゼをウェイトレスが持ってくる。びっくり。絶妙なタイミングだ。
「・・・ずっと、見ていたのかな?」
美穂は不思議に思う。あまりにも、パーフェクトなタイミング。和希は、美穂が不快になってしまったのか、と少し心配になった。
「違うよ。シェフの長年の勘、っていうのかな。そういうので、だいたいのタイミングは分かるらしい。まぁ、ギリギリまで作っておいて、皿を下げた時点で仕上げるんだけど」
「詳しいね、カズキくん」
「あ、昔ここで、ウェイタ―してたから」
うわっ、まずっ。バイト先以外、他の店を知らないダサい奴だと思われたかな、と和希は思う。
「へぇ~、そうなんだ。」
・・・予想外に美穂の反応は素直だ。気にし過ぎなのも僕の悪い癖だな。ボロネーゼを2つの皿にシェアする。
「だから、そんな風に自然に分けてくれるの?」
「まぁ、ね。取り分けてください、っていうお客さまもいたから。とりあえず、食べよ、食べよ!!」
ボロネーゼも、おいしい。ひき肉とトマトソースがこっくりと調和している。
「忘れてた。パルメザンチーズ、いる?」
「ううん、なくても美味しい。」
「バレる前に言うけどさ、CLOVERでも、僕、バイトしてたんだ。食べることがすごい好きで、食べ物屋でバイトすることが多くてさ」
食べることが好きなのは、美穂もいっしょだ。拓也は確かにグルメではあったけど、高級店を食べ歩いて批評する感じだったから、すこしついていけなかったんだよね。
「今も、食べ物屋さんでバイトを?」
「いや、今は・・・青山の、Sienaって宝石店で店員してる。勉強も兼ねてね」
あぁ、だから、メアドがSiena。あのレストランに関係していたら、どうしようかと思ってた。美穂のほっとした顔が気になったのか、和希が
「どうかした?」
「ううん。いつか、カズキくんのバイト先にも行ってみたいな、と思って」
「そうだね、いつか。そろそろ行こうか」
約束通り、会計を割り勘――とはいっても、和希の方が少し多く出したがーーにして、店を出た。大江戸線に乗って、新桜台へ。
駅から、歩いて5分ほど。商店街の中央あたりにCLOVERは、あった。