甘いキスはいかがですか?
「ごめん、ごめん」

俺はそう言い、かばんの中からチョコレートを出した。いつも貰ってばかりじゃダメだろうと買ってよかった。織里奈の目が輝く。

「ホワイトトリュフだ〜!」

俺は袋を開けて、「ほら、あ〜ん」と織里奈の口の中にホワイトトリュフを入れる。咀嚼する織里奈の顔は、幸せそうにとろけていった。

「おいしい。ありがとう」

その無邪気な表情に、またキスをしたくなったのは内緒。



そして、男子たちにとってモテるかどうかがかかった日、バレンタインがついにやって来た。

「翔くん!!これ、貰って〜!!」

女子たちが甘ったるい声を出しながら、手作りのチョコを差し出してくる。俺には織里奈がいるってわかっているくせに……。奪えるとでも思ってんのか?

「悪りぃ。俺、織里奈のしか受け取らないって決めてるから」

そう何度言っても、女子たちは迫ってくる。バレンタインはちょっと憂鬱だ。織里奈から手作りのチョコを貰えるけど、他の女子たちがいつもよりうざったく感じる。
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