夏が好きな理由
「アンタの彼女になる人は大変だね。流行っているものをほとんど知らないんだから、会話に困るよ」

「彼女ができる予定、ないですよ」

アイスを食べながらこうやって話す時間が、とても楽しい。だから彼女は作らない。向日葵先輩にとってはただの友達の弟でも、僕はーーー。

「そっちのアイス、一口ちょうだい」

半分ほど食べ終えた頃、向日葵先輩が言った。先輩のアイスも半分ほど減っている。僕らはアイスを食べるスピードはなぜか同じだ。

「……いいですけど、先輩のアイスもくださいよ?」

僕がそう言うと、「フッフッフ……。私が食べてるのはアイスじゃないよ〜!!」と向日葵先輩は笑う。

「えっ?でも、シャーベットじゃないですよね?」

「うん。私の食べてるのは、ジェラートだよ!」

ジェラートは聞いたことがある。確かイタリアのアイスだったような……。よく見ると、向日葵先輩の食べているアイス……じゃなかったジェラートのカップには「ジェラート」と小さく書かれている。
< 3 / 9 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop