夏が好きな理由
向日葵先輩はそう言ったが、ここで僕はあることを思い出す。

「先輩、今日って吹奏楽部は一日練習の日じゃなかったですか?僕らは午前で終わりですけど……」

「ああ〜!!しまった〜!!」

向日葵先輩はグラウンド中に響くような大声を出す。隣にいた僕は耳を塞ぐのを忘れてしまった。耳がおかしくなっている。

「じゃあ、今度奢りますよ。だから頑張ってください」

「うう〜……。ほんとはサボりたいけど、コンクールもあるからなぁ〜……」

ブツブツ言っていた向日葵先輩だったが、「しょうがないか」と言い前を向く。その横顔も綺麗だな……。

向日葵先輩は、トランペット担当らしい。きちんと演奏を聴いたことはないけど、綺麗な音色という噂だ。今度お願いして何か弾いてもらおうかな。

「あ!練習頑張るからさ、ちょっといい?」

向日葵先輩は僕の方を見て、ニコリと笑う。その刹那、僕の手からアイスを取り上げて一口食べていた。しかも、僕の使っていたスプーンで……。
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