成り行きで結婚しましたが、わりと幸せです。
はぁはぁはぁ。

可能な限り全力で走り、コーヒーショップで、母好みの焙煎をしてもらい。

全速力で家に帰ると、話し声がして来た。
嫌な予感は、玄関にある靴が当たっている事を印象づける。

「あ、ちょっと、鹿瀬さん」
「たくや」
「あっ」

玄関先でへたり込む私を抱き上げる。
呼び方が気に入らない彼は、私の耳にささやく。

「へー、耳弱いんだ」
「かの、拓也さん下ろしてください」

鹿瀬さん、と呼ぼうとする私の耳に再び顔が、近づく。
あわてて、言い直し、降ろせと暴れる。
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