成り行きで結婚しましたが、わりと幸せです。
「綾ちゃん、これ飲んで落ち着きな」

午後の営業先はいつも馴染みで私を娘のように可愛がってくれる社長さんがいるお店。
奥さんと従業員数名の小さな事務所だが、社長さんの人の良さで築いた人脈で、かなり手広く商売をされている。

「すみません。小林さんにはご迷惑かけっぱなしで」
「いいんだよ。綾ちゃんのおかげで嫁とも仲直りできたし。」
「そうそう、綾ちゃんのためなら何でもさせるから」
そう言って、お菓子を出してくれるのは、奥さん。

お茶とお菓子を頂いて、ひと呼吸おいてから、新商品の説明に入る。

「綾ちゃんて、外さないよね。いつも妻と話してるけど、かゆいところに手が届くようなものいつも持ってくるなぁ。って思って」
「ありがとうございます」
「でも、値段がね。2割くらい引いてくれたら検討するけどね」
「それは無理です」

価格交渉も和気あいあいと進み。
2割分の消耗品をプレゼントで商談成立となった。
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