成り行きで結婚しましたが、わりと幸せです。

「橘、さっきはすまなかった。」

いくつかの営業先を回り、今日のデスクに戻ると鹿瀬拓也が、待っていた。

「いいえ、私の方こそすみませんでした。」

ペコリと一礼し、今日の営業の後処理を終わらせ、時間は21時。
お腹空いたな。と、考えながら戸締まりを確認し電気を消すと、いるはずのない廊下に人影が。

「橘」
「ひっ」

名前を呼ばれ腕を捕まれ、思わず悲鳴を上げる。

「あっ、ごめん。驚かせる気はなかった。ちゃんと謝りたくて待ってたんだ」

「あぁ、別にもう良いですよ」

面倒くさくて否定せずにいたツケだと思う。
彼だけが悪いわけではない。

「夕飯食べに行かないか?」

「行くとこあるんで」

「そうか」

お詫びに食事を奢ってくれる気だったらしい。
彼が退室してからかれこれ1時間以上。
知らなかったとは言え、申し訳ない気もする。
いつもクールな彼が、がっかりしてるのが妙に可愛くて、罪悪感を刺激する。

「鹿瀬さんさえ良ければ、一緒にどうですか?」

行きつけの居酒屋に行く旨を伝えると、素敵な笑顔を返してくれた。

イケメンは笑っちゃ行けない破壊力ある。