雨の滴と恋の雫とエトセトラ
 私はアイスティにシロップを入れようとしていた手を止め、明彦を見た。

 明彦はシュワシュワと細かい泡が激しく動くのを楽しむように、ストローをかき混ぜ、そして顔を上げて私と目が合うとにこっと笑った。

 まるで私が誤解しているとでもいいたげに、屈託のない無垢な笑顔にもかかわらず、どこか注意されているような印象を受けた。

 それを悟られないようにしたのか、明彦は一口ソーダを飲んでから、また私に話しかけた。

「ねぇ、ねぇ、千佳はクラスでどんな感じ? やっぱりえらっそうにして、クラスを牛耳ってる?」

「そんなことないよ。いつも落ち着いて、物事を的確に捉えた発言してるからすごく頼りになるけど」

「千佳は色んなこと腹に抱えてるから、結構冷めた目で見るところはあるけど、そんな風に言ってもらって弟としては嬉しいかな。家でもそんな感じなんだけど、僕がこんなんだから益々男っぽくなってしまってさ、千佳の方が長男みたいなんだ」

 それは私も思ったことだった。

< 103 / 248 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop