雨の滴と恋の雫とエトセトラ
「明彦は姉思いなだけさ」

 コーヒーカップを手にして瑛太がぼそっと言った。

 どういう意味で言ったのだろう。

 双子だから、姉弟でも気持ちが人一倍通じ合うことはあるだろうが、瑛太の言い方だと明彦はわざと頼りなくなって姉を立ててるような言い草だった。

 どっちみち仲のいい姉弟だろうけど、瑛太が友達の事をしっかり見ていることに優しさを感じてしまった。

 私には気があるフリをして憎まれ口を叩くような奴なのに、どこかちぐはぐさを感じてしまった。

 瑛太はまた拓登を見ていた。

 拓登は視線を感じたのか、瑛太に振り向いた。

 瑛太は慌てずに、ふっと息を漏らしたように小さく笑っていた。

 拓登も戸惑っているのか、さっきからずっと黙りっぱなしで、コーラの減り具合が誰よりも早かった。

 間を持たせるためなのか、その時、瑛太がカウンターのスツールからひょいと降りて、そして私達のテーブルに置いてあったスナック菓子をつまんでパクッと食べた。

 そして私を見つめるのだけど、一瞬その目がどこか鋭く挑戦的なものを感じて、私が顔を歪めると、片目を閉じてウインクした。

 どういう意味なのか、よくわからない。

 その時、明彦が質問を私に振ってきた。

「ねぇ、真由ちゃん、瑛太のことどう思う?」

 つい飲もうとしていたアイスティのグラスを持ち上げる手が止まり、隣にいた拓登も同時に私に振り向いた。
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