雨の滴と恋の雫とエトセトラ
「別に悪口なんていってないわよ、本人を目の前にして。明彦君がどう思って聞くから正直に答えたまで」

 私と瑛太は熱い火花をちらしたような視線を合わせた。

「僕はまだ同じ学校に通って知り合ったばかりだけどさ、瑛太と同じ中学だった真由ちゃんだったら、瑛太の地元の友達とか知ってるんじゃないの? 一体どんな友達がいた?」

「えっ、瑛太の友達?」

 気にもしていなかった存在だったのに、その周辺のことまで見てるわけがない。

 中学の時は小学校から上がるだけに面識がなくとも、大体雰囲気で同学年という見たような認識はあるが、それはあくまでもなんとなく知ってるという範囲にすぎない。

 同じクラスにならずに喋ったことないとしたらその周りに集まる人々や関係など全く興味がない分、いてもいなくてもいい感覚でしかなかった。

 意識しなければ記憶にとどめられない存在。

 それが瑛太だったのに、明彦は一体どうしてそんなに瑛太の事を私に聞いてくるのだろうか。

 もしかして、瑛太を助けようと一肌脱いでるのかもしれない。

 ヒロヤさんのビジネスにも係わるくらいだから、それくらい快く進んで助けるタイプだろう。

 はっきりいってお節介?

 だけど、これだけ罪もなくイノセントな表情で来られると参ってしまう。

 瑛太もまさか、明彦のその子供っぽい無邪気な性格を見込んで私が言い返せないと思ってわざとやっているのだろうか。

 そうだとしたら、瑛太は策士だ。

 益々私は警戒してしまった。

 しかし、瑛太は一体何をしたいのだろうか。

「瑛太には地元で仲のいい友達とかいなかった?」

 どうして私に聞くのだろう。

 それが知りたいのなら本人に聞けばいいのに。

「私が答えるよりも、それは瑛太本人が一番詳しく知ってることだと思うけど」

 私が眉間に皺を寄せて怪訝にした表情をしたとき、明彦は少し身を引いた。

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