雨の滴と恋の雫とエトセトラ
「そ、そうなんだけど、こういうのって第三者からの目からみたらさ、よく見えてくるものがあるじゃない。真由ちゃんがどれくらい瑛太の身の回りのこと知ってるのかなって思って」

「えっ、私、本当に何も知らないの。だって瑛太と同じクラスになったのは小学一年生の時だけなんだよ。後はずっと離れてて接点なんて何にもなかった」

「ふーん、小学一年生のときに同じクラスか」

 明彦が再び身を乗り出してきた。

「その時の瑛太ってどんな子供だった?」

「そんな大昔の事、一々覚えてないんだけど」

「でも唯一、瑛太と接点があったんでしょう。何か一つくらいは覚えてると思うんだけど」

 それでも明彦は私の知ってる瑛太の情報を言わせたいのか、そこのところにくらいついた。

 まるで猫が獲物に狙いを定めた時、瞳孔が大きく開くような丸い目をして、私からの答えをワクワクして待っていた。

 その態度はやっぱり邪険にできない。

 小学一年生の時に瑛太に関係する出来事といえば、この間カミングアウトされたほっぺのキス事件。

 あれはされた事を覚えてはいたが、それが瑛太だったと知ったのは本人からの告白があったからだった。

 私としてはピンと来ないし、またそんな話題をここで話すのも憚られるし、でもそれしか思い当たる事がないので非常に困ってしまった。

「覚えてない」

 しらばっくれるしかなかった。

 その時かちゃりとコーヒーカップをソーサーに置く音が耳についた。

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