雨の滴と恋の雫とエトセトラ
「まるで他人事のような言い方ね。自分がやったくせに。しかもこの間も!」

 それを言った時、自分から蒸し返してしまった事を後悔した。

 拓登がはっとして私の顔を見合わせている。

「はいはい、もうなんとでも言ってくれ。俺は全てを受け入れるよ。真由のためならなんでも」

 最後はウインクで締めくくり、とうとう瑛太は開き直ってしまった。

 結局、自分は振り回されただけで拓登の前で醜態を見せただけに終わってしまった。

 拓登は不安な面持ちで、如何にもこの状況がおかしいとでも言いたそうに眉根を寄せていた。

 もしかして、瑛太は私のいやな部分を拓登に見せようとしているのではないだろうか。

 明彦を使ってくるくらだいだから、それも考えられるかもしれない。

 私はいた堪れなくなって、アイスティーのグラスを手に取り、残りをすすった。

 氷が解けて薄まった味は、はっきりと思い出せない忘れていく記憶と同じに思えた。

 あやふやな水っぽい味とぼやけてしまった頼りない記憶。

 最後にストローでグラスの底に沈んだレモンをつつく。

 その時それを見てふとある事を思い出し、そして深く考え込んだ。
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