雨の滴と恋の雫とエトセトラ
10
 この日も、同じように一日が終わっていった。

 拓登とまた一緒に帰る約束をしているし、今回は自分から誘ったこともあって、以前ほどおどおどすることなく落ち着いている。

 一緒に帰ろうと誘われて、初めて肩を並べて歩いたあの雨の日。

 それとは打って変わっての、初夏が近づく頃の爽やかな青空が広がり、そこに真っ白い雲が浮かんでいた。

 拓登はその青い空を遠い目で見ている。

「さっきから空を見ているけど、何か考え事?」

「別に大したことはないけど、晴れの日の方が楽だなって思って」

「楽?」

「この先、梅雨が待ってるだろ。じめじめとして鬱陶しくなるのかなって、そんなこと考えてた」

「拓登は雨のことになると気になるみたいだね」

「そんな風に見えてしまうのかな。決して雨が嫌いとかじゃないんだけどね。雨が降ったから真由が傘貸してくれて、出会いのきっかけにもなったしね」

 拓登は私に微笑を向けた。

 その笑顔はやはりドキドキとさせてくれるものがあった。

 でも私も真っ向からそれに向き合う。

「そうだよね。雨のお陰だよね、拓登が私に話しかけてくれたのも」

 私もその出会いに感謝している。

 その気持ちは素直に伝えてみたかった。

 お互いとても落ち着いていたように思う。

「真由はやっと僕に慣れてくれたみたいだ。最初はすごく戸惑って、敬語なんて使ってたし」

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