雨の滴と恋の雫とエトセトラ
 実際、瑛太を貶めようととかそういうつもりでいったことではなかったが、入学できたところでついていけなかったら受かった事に胡坐をかいていても仕方がない。

 どこかで明日は我が身という危機感を持っていることをお互い言い合ったことで、瑛太が志望校にいけなかった事を話した罪悪感は忘れられるような気がした。

 改札口を出ると、拓登は名残惜しそうにしながら「また学校で」と手を振る。

 充分二人だけの時間を過ごしたと言うのに、拓登とはもう少し一緒に居たいという気持ちが出てくる。

 こういう気持ちを抱いた時、とうとう自分も恋の領域に踏み込んでしまった自覚があった。

 拓登といると安心感があるし、聞き上手の拓登だから話していても楽しかった。

 未練を持ちながらも、手を振って潔く別れて私は歩き出した。

 暫くすると鞄に入れていたスマホが音を立てているのが聞こえた。

 それを取り出してみれば、拓登からのメッセージが入っていた。

『真由、一緒に帰ろうと誘ってくれてありがとう。とても嬉しかった』

 きっと自転車を取りに行っている時に送ってくれたのだろう。

 私もすぐにメッセージを返す。

「私も拓登と一緒にいると楽しい」

 私の素直な気持ちだった。

 ニヤッとしながら、操作ボタンに触れた。

 そんな些細なやり取りでも胸の奥がきゅっと熱くなっていた。

 拓登といい関係が築けそうと、この時まではふわふわした気持ちに酔ってこの先何が待っているのかなんて微塵も感じられなかった。

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