雨の滴と恋の雫とエトセトラ
『分かり合えたら、真由と池谷君ってすごく相性良さそうなんだけど』

 分かり合えたらか。

 さっきは少しだけそういう気分を味わえたような気になった。

 それでもまだ油断はできないけども。

 私もまた家に向かって歩き出した。

 家についたら、母から電話があったと知らされた。

 萌だった。

 そういえば、色々と情報集めをしてもらっているのを思い出した。

 直接私のスマホにかけてくればいいのに、と思ったとき、映画館に入る前に電源を切っていて元に戻してなかったことに気がついた。

 慌てて電源をつけると、萌からのメッセージもあったが、そこには拓登からのメッセージも入っていた。

 先に拓登のを見る。

『色々とあったけど、ものすごく楽しかった。僕のこともこれで少しはわかってくれたかな。でも本当の事がわかっても、僕のことは嫌いにならないで欲しい』

 よほど、海外暮らしを隠していた事が気になってた様子だった。

 こんなことくらいで、どうして嫌いになれるというのだろうか。

 私はすぐに返事を返していた。

『拓登のこともっと知りたいと思った。拓登がどこで育とうと、拓登は拓登のままだと思う。だからそのままで頑張れ~。私も今日は色々と刺激を受けたから、もっと頑張らないとと思ったよ。特に英語。やっぱり瑛太には負けたくない(笑)』

 以前、頑張れって言葉が好きで、そう言って欲しいっていわれてたから、そんな風に書いたけど、これで変に思われないかな。

「やだ、真由、何一人でニヤニヤしてるのよ」

 リビングルームのソファに座って自分の世界に浸りこんでいただけに、母が側に居るのを忘れていた。

「なんでもない」

 そして送信ボタンに触れ、自分の部屋に行った。

 間もなくするとまた、スマホから反応があった。

『ありがと。真由も、頑張れ。僕は喜んで応援するよ』

 知らずと顔が弛緩してしまった。

 拓登とは本当にいい関係を築いているように思えた。

 急激に事が進むよりも、お互いを良く見て知ってから気持ちが育んでいく。

 そっちの方が私達には合っているように思えた。

 拓登も日本に戻ってきて、こちらの生活に慣れるまで少し時間が掛かるに違いない。

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