雨の滴と恋の雫とエトセトラ

 ディスプレイに出てきた電話番号。

 知らない番号だったが、もしやと思って恐々と電話に出た。

「もしもし」

 緊張しすぎて声が裏返りそうになってしまう。

「もしもし、阿部と申しますが、倉持さん?」

 阿部君もどこかおどおどとした調子で様子を探るようだった。

「はい、そうです。阿部君、わざわざ電話ありがとう。急にお母さんを頼って連絡してごめんなさい」

「別にいいけど……」

 戸惑った声だったので、もしかしたら迷惑なのかもしれないと思うとそわそわしてしまう。

「全くいきなりだもんね。私の事も覚えてないだろうし、本当にごめんなさい」

「いや、倉持さんのことは覚えてるけど、話すのはあまりにも久し振りだし、僕もなんだか緊張しちゃってさ。とにかく聞きたい事って何かな」

「その池谷瑛太のことなんだけど」

「ああ、瑛太か。瑛太がどうかしたの?」

 阿部君は母親とは違って、電話越しでは少し冷たい感じを受けた。

 突然に、連絡をしたことで、やはりどこかで気に入らない感情があるのかもしれない。

 阿部君の態度に飲まれてしまって私は話しにくくなってしまった。

「すごくしょうもないことで申し訳ないんだけど、過去のあることでどうしても真相を知りたいことがあるの。それで、その当時同じクラスだった阿部君の事を思い出して、何か聞けないかなって思ったの」

「それで、その聞きたい事って瑛太に関係ある訳?」

「ええっと、関係あるんだけど小学一年の時、瑛太とすごく仲がよかった人は誰か分かる?」

「そんなの僕に決まってるじゃないか。瑛太とは親友だと今でも思ってるよ。中学で学校が違うから離れてしまったけど、時々は連絡取り合ってはいるよ」

「えっ、阿部君が一番仲がいい? じゃあそれって……」

 私の頬にキスをした人はもしかして阿部君なの?

 瑛太と過去のキス事件の話をしていたとき、犯人は瑛太の親友だといった事が思い出された。

< 194 / 248 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop