雨の滴と恋の雫とエトセトラ
「やだ、千佳、やめてよ。私と瑛太が似てるってそれひどい」

 まさかそんな事を言われるとは思ってなかったので、少し憤慨してしまった。

「ごめんごめん、真由。だけど、池谷君ってさ……」

 そこまで千佳が言った時、休み時間終了のベルがなった。

 そのベルに邪魔されて、千佳はその先を言うのをやめた。

「ちょっとどうしたのよ、千佳。瑛太がどうしたの」

「なんでもないんだ。結局は私が言うことじゃないないなって、なんかお節介に、気になってね。ごめんごめん」

「そこまで言いいかけたんだから、教えてよ」

 白黒はっきりさせたい私には、中途半端にされるのすごく嫌だった。

 しかし、強く千佳に言うのは憚れる。

 こういうとき、かの子がはっきりと言ってくれた。

「千佳は、時々何かを感じて鋭いんだけど、常に干渉しないスタンスだから、話してる内に飽きてしまって、どうでもいいって投げちゃう事がよくあるんだよね。冷めてるというのか」

「かの子は熱くなりすぎて余計な事まで言い過ぎるじゃないか」

 千佳も精一杯言い返しているが、そういう千佳とかの子は正反対なところがいいバランスを保ってるとはいえる。

「でもさ、過去の事がはっきりしたら、池谷君はもう真由の邪魔をしなくなるのかな。私はそんな気がしないな。池谷君が真由の邪魔をするのは、真由が池谷君の気に入らない事をしてるからでしょ」

 みのりが考えながら口にする。

「だから、池谷君は真由に振られて腹いせをしてるってことだろ」

 かの子がずばりいった。

「思うようにならないと悪意をむき出しにする人もいるけどさ、好きな女の子に振られて、とことん意地悪してやろうってすごいエネルギーがいると思うんだ。 だって振られたら、個人差はあるけど最初は落ち込んで暗く辛い日々を過ごすと思うんだ。それなのに池谷君はすぐに邪魔すると敵意を見せる心理が、私には ちょっとわからないな」

 みのりの意見ももっともだった。

 何かしら例外はあるかもしれないが、振られたら落ち込むのがまず普通な感覚だと思う。

 それなのに瑛太は、最初に怒りの方が来て、その後は明るく楽しそうに邪魔をしにきている。

 みのりに言われて初めて気がついた。

 そして千佳はその時、難しそうな顔になって宙をみつめていた。

 千佳は確実に私の気がつけなかった何かを感じ取ってるようだった。
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