雨の滴と恋の雫とエトセトラ

 先生が教室に入って来たとき、皆慌てて席に戻るが、千佳はその前に耳元で私だけに囁いた。

「放課後、少し付き合ってもらえる? 話したい事がある、二人だけで。ヒロヤさんの店に来て」

 「えっ」と驚きつつ、返事を返す間もなく、千佳は席に戻っていった。

 私は千佳の顔を振り返ると、千佳も私を見ていたのでとりあえずは頷いて自分の意志を伝えた。

 千佳はニコッとし、その直後「起立」という声が掛かったので立ち上がって先生に礼をすると、授業が始まった。

 千佳の事が、気になりつつも、授業をおろそかにはできないのですぐに切り替え、私はノートをとる準備に入っていた。

 授業が終わった時はまたいつもの四人で集まったが、千佳は何事もないように普通の調子でいた。

 放課後、私はそわそわしていたが、千佳は用事があると一人で先に帰った。

 ヒロヤさんの店に先に行って待っているということだった。

 かの子もみのりにも言わずに私だけに話したいこと。

 一体なんだろう。

 先に帰って行く千佳の後姿を見ていた。

 かの子は掃除当番だったので、先に帰ってと私とみのりに言った。

 私もヒロヤさんの店に行かなければならなかったので、素直に言う事をきいた。

 拓登とは廊下で会ったが、友達に囲まれて男同士でつるんでいるようだったので、さりげなく「またね」と手を振って帰った。

 毎回一緒に帰る義務はないし、それぞれ友達付き合いもあるから、それは臨機応変になっていた。

 私が挨拶した後、後で拓登が冷やかされているのを耳にしながら、みのりと歩いていた。

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