雨の滴と恋の雫とエトセトラ
「だけどさ、山之内君って寡黙な人そうだよね」

「もうすでに何人かは山之内君に告白したみたいだけど、全て振られたんだって」

「まだ知り合って間もないのに、早い。それは断られるわ」

「だけど、シャイかもしれないじゃない。あまり女性になれてないのかもよ」

「一体どんな人がタイプなんだろうね」

 皆は好き好きに喋っていながら、時折うっとりとした目になっている。

 自分が山之内君のタイプじゃないかと、どこかで願っているような様子だった。

 そう思いたくなるのも分からなくもないけど、確かにあれだけかっこいいと気にはなるかもしれない。

 どこか周りの男子達と違って、しっかりとした大人びた表情が特に印象的だった。

 自信が溢れていて、落ち着いた優雅さがあった。

 その雰囲気だけでも気品があって、余計にかっこよさが目立っている。

 中から表面に滲み出てくるものがあるから、自然に精悍さが現れているのかもしれない。

 私も傘を貸したことで、正直意識してしまうけど、本人はすでにあやふやになってるだろうし、今更傘の話なんてできないところがあった。

 思春期の男女って、見てみぬふりで、ぎこちないもんだと思う。
 
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