雨の滴と恋の雫とエトセトラ
「そっか、池谷君…… だね。その、彼なんだけど……」

 なんだかこの後言い難そうにして、私の反応を注意して窺っていた。

 やっぱり何か誤解しているようにも見え、ここはしっかりと説明しなければならないと強く思ってしまう。

「池谷君は、その、小学校、中学校が同じだったけど、碌に話をしたこともなくて、昨日、声を掛けられて私がびっくりしたくらい」

「池谷君とは親しくないの?」

「親しいとか言う前に、ほんとに喋ったことがないんだけど」

「でも、池谷君はとても倉持さんと親しそうだったけど」

「その、小学一年生のとき、同じクラスに一度なっただけで、知ってることは知ってるの。でもほんとにそれだけのことで、後は学校が同じでも昨日まで一度も喋ったことがなかった。どうして昨日声を掛けられたのか不思議なくらい」

「小学一年生のとき同じクラスだった?」

 山之内君が訝しげな表情で私の様子を伺っている。

 辺りはどんどん陽の光が弱まって薄暗さが増し、それとは対照的に駅やその周辺の建物の灯りが強くなってきた。

 山之内君の表情にも陰りが見えたのは充分な光がなかったからだろうか。

「でも、池谷君がどうしたの?」

 もしかして私の彼と誤解しているんだろうか。

 ここでそんな事を自分の口から言ったら、自惚れに繋がる自信過剰と見なされて、山之内君に何かを期待していると自ら墓穴を掘りそうだった。

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