雨の滴と恋の雫とエトセトラ
「僕が倉持さんと一緒にいたからさ、それで昨日じろじろ見てきたし、ちょっと気になって」

 山之内君は何が言いたいのだろう。

 行動力もありハキハキとしている人なのに、この時とてもハギレが悪かった。

 何かをいいたそうにしているが、私を見てはそれがいい出せないのか、それとも私の出方をみているのか、視線だけは私からはずさなかった。

 じっと山之内君に見つめられると、私の胸の高鳴りはどんどん小切れのいいビートとなってしまって息苦しい。

「池谷君…… って人は何か僕のこと言ってなかった?」

「別に、これといって、特には。ただ冗談で三人で遊ぼうとか宜しく言えとかいってたけど、あの人はお調子者でチャラチャラしてるから」

「それで、倉持さんは池谷君のこと好きなの?」

「えっ!」

 まさか、ダイレクトにこんな質問をされるとは思わなかった。

 咄嗟に手をブンブンと力強く振って、私はムキになって否定する。

「だから、ほとんど昨日初めて話したようなもので、池谷君は私とは全く関係がないの」

 つい力んでしまった。

「そっか、それならよかった」

「えっ?」

「いや、なんでもない。こっちのこと。ごめん、なんか僕のこと変だと思ってるでしょ。僕、その通りちょっと変なんだ。ハハハハ」

 私がどう反応していいのか迷っていると、山之内君もまた複雑な顔をして私を見つめていた。

「山之内さん、僕のこと、ほんとにどう思う?」

 急に真面目な顔を向けた。

 辺りはすっかり薄暗く、その中で真剣な眼差しを向けられるとすごく迫力があった。

「ど、どう思うっていっても、その」

 私はどう答えていいのだろうか。

 これって山之内君が私の事に気があって、試しているんだろうか。

 まさか、そんな。

 完全に自分を見失って、何をどう答えていいのかわからない。

 その答え方で全てが決まってしまいそうで、変に身構えるから気安く言葉が出てこなかった。

 あたふたしていると、山之内君はもどかしさを顔に募らせる。

「ねぇ、僕の顔を真剣に見て」

 山之内君はさらに顔を近づけてきた。
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