瞳に印を、首筋に口づけを―孤高な国王陛下による断ち難き愛染―
 笑いが収まらずにいると、クラウスが無反応なのに気づく。彼を見ると複雑な面持ちでレーネをじっと見つめていた。

 気分を害しただろうかと体を強張らせていると、クラウスの手がレーネの頬に添えられる。続けてゆっくりと顔を近づけられ、彼の形のいい唇が動く。

「そうだ。お前のことには、なりふりかまっていられない」

 深い色を宿した鉄紺の瞳に吸い込まれそうだ。瞬きもできず固まっているとおもむろに唇が重ねられる。

 軽く触れるだけですぐに離れ、クラウスは改めてレーネに視線を送る。言葉を発しなくても相手がなにを訴えているのかくらいはわかる。

 熱のこもった眼差しを受け、レーネは躊躇いがちにぎこちなく目を閉じた。予想通り唇に柔らかい感触がある。

 角度を変えて穏やかなキスが繰り返され、次第にレーネの心も落ち着いていく。唇の力を緩めると隙間から舌が滑り込まされ、レーネもぎこちなく応える。

「んっ……」

 自然と口からくぐもった声が漏れるが、自分ではどうしようもない。こればかりは他のことと比べ圧倒的に経験不足だ。

 正しいやり方などわからないままゆるやかに口内を刺激され懐柔されていく。快楽と不安の波が交互に押し寄せ無意識に逃げ腰になるレーネをクラウスは強く抱きしめた。

 その一方で、深くなる口づけ合間に慈しむように彼女の頭や髪を優しく撫でる。その些細な気遣いがレーネの張り詰めた気持ちを和らげていく。
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