瞳に印を、首筋に口づけを―孤高な国王陛下による断ち難き愛染―
 クラウスがゾフィやレーネと初対面ではないのは、昨日のやりとりを見ても明白だった。ゾフィも再会を喜ぶような内容を語っていた。

 とはいえ、もう十年以上前の出来事だ。お互いにまだ子どもといえる年齢で、レーネがクラウスをあれほど拒み、クラウスがレーネに執着するほどの事態があったのか。

 いまいちルディガーにはピンとこない。やはりフューリエンが大きく絡んでいるのか。

 前国王が幼い姉妹を(さら)ったのもそこに起因している。前々からクラウスには想い人がいて、それはフューリエンが関係しているのは薄々勘づいていた。そうすると、逆に妙だ。

「……てっきりお前はゾフィ女王を望むと思っていた」

 正直な感想を漏らすと、クラウスの鋭い眼差しがルディガーに向けられる。

「なぜ?」

 冷ややかな声にルディガーは失言だったかと後悔するが、理由はわからない。おかげで正直に答える。

「なぜって……たいした意味はないさ。ただ彼女が伝説のフューリエンと色々酷似していたものだから」

「酷似、ね」

 クラウスはルディガーの言葉尻を捉え、皮肉めいた笑みを浮かべる。

「彼女はもうすぐ十八になると言っていた。それに伴い瞳の色も元に戻るさ」

 フューリエンの末裔や生まれ変わりとして扱われるのがほぼ少女であるのは、その瞳の色が十八の年になると、自然と本来の色に戻るからだ。

 元々特殊な力も持たず、片眼異色という外見のせいだけで特別視される彼女たちは、十八の年になりようやく長年の呪縛から解放される。

 現にルディガーと同じアードラーであるスヴェンの妻ライラも片眼異色で囚われの身だったが十八の年になり両眼とも穏やかな緑色になった。
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