瞳に印を、首筋に口づけを―孤高な国王陛下による断ち難き愛染―
ふたりの出会い
アルント王国が誕生するさらに昔、今となっては隣国との国境沿いに位置する山地の中に、人知れない小さな集落があった。
人口は六十人ほどで、彼らはけっして外部の人間とは交流せず村から出ることもない。
地理的要因も大きいが、それよりも徹底して閉鎖的な暮らしを営むのは、村の女性の左目が生まれつき全員、金色だからだ。
右目は各々異なるにも関わらず、共通して顕れる特徴は、この村で暮らす者の暗黙の了解になった。
左右の瞳の色が違うのは当たり前で、中には女性はそういうものなのだと認識する若い者もいる。
そして年長者から聞かされるのだ。女性の左目の色が金色の理由と、彼女たちの中に現れる神子の存在を。
「神子さま」
物心がついたときから少女は村人にそう呼ばれていた。元々名前があったのかは定かではなく、実の両親でさえ彼女を特別扱いだ。その理由を幼い少女はよく理解していた。
彼女には生まれる前の記憶があり、さらにその前、加えてその前と幾人もの人生……自分の魂の記憶を保有している。いつの時代もこの村で繰り返し生まれ、左目は金色、神子と呼ばれるのも共通だ。
おかげで少女は生まれて言葉を発する頃には、早くも自分の人生に絶望していた。
「もう終わりにしたい」
「また物騒な発言を。あなたはまだ十四歳ですよ」
今回の自分の容姿は、穏やかな翡翠を彷彿とさせる緑色の右目にやや褐色気味の薄茶の髪。左目は当然、金色だ。
人口は六十人ほどで、彼らはけっして外部の人間とは交流せず村から出ることもない。
地理的要因も大きいが、それよりも徹底して閉鎖的な暮らしを営むのは、村の女性の左目が生まれつき全員、金色だからだ。
右目は各々異なるにも関わらず、共通して顕れる特徴は、この村で暮らす者の暗黙の了解になった。
左右の瞳の色が違うのは当たり前で、中には女性はそういうものなのだと認識する若い者もいる。
そして年長者から聞かされるのだ。女性の左目の色が金色の理由と、彼女たちの中に現れる神子の存在を。
「神子さま」
物心がついたときから少女は村人にそう呼ばれていた。元々名前があったのかは定かではなく、実の両親でさえ彼女を特別扱いだ。その理由を幼い少女はよく理解していた。
彼女には生まれる前の記憶があり、さらにその前、加えてその前と幾人もの人生……自分の魂の記憶を保有している。いつの時代もこの村で繰り返し生まれ、左目は金色、神子と呼ばれるのも共通だ。
おかげで少女は生まれて言葉を発する頃には、早くも自分の人生に絶望していた。
「もう終わりにしたい」
「また物騒な発言を。あなたはまだ十四歳ですよ」
今回の自分の容姿は、穏やかな翡翠を彷彿とさせる緑色の右目にやや褐色気味の薄茶の髪。左目は当然、金色だ。