瞳に印を、首筋に口づけを―孤高な国王陛下による断ち難き愛染―
実際にレーネは愛や恋などと無縁に生きてきた。愛も恋も知らない。勘違いだけならたくさんしてきた。傷ついて、そのたびに悟る。
優しくしてくれるのは、大事にされるのは自分が神子だからだ。愛し愛され、愛し合うとは、どういうことなのか。きっと永遠にわからない。得ることもない。それ以前に――。
「私、こんな外見だし」
片眼異色の運命はこの先もずっと背負っていかなくてはならない。無意識に本音が漏れ、レーネは慌てて取り繕う。
「ゲオルクなら、私の助言なんてなくても女性の扱いはお手の物でしょ」
「……そうだな」
膝を抱えて素っ気なく返すと、あっさり返事がある。もうこの話題は終わりだ。
そう思って立ち上がろうとしたレーネだが、不意に力強く腕を引かれ、思わずうしろに倒れ込む。
先ほどと同じくやや湿り気を帯びた草の感触が背中にあって、横を向けば同じように寝転んだゲオルクと目が合う。鉄紺の瞳にじっと見つめられレーネの心臓が跳ねた。
「どうしたの?」
「お前に聞きたいのは、猫の飼い慣らし方だ」
突拍子のない質問内容にレーネは目を瞬かせる。
「あなた、猫を飼うの?」
それは初耳だ。ゲオルクはレーネの問いには答えず、そっと彼女の頭を撫でだす。
「気ままで、気まぐれで、警戒心が強くなかなか心を許さない。なにを考えているのかわからないんだ」
低い声色と真剣な眼差しにレーネはわずかに戸惑う。そこまで深刻になる話なのか。とりあえずゲオルクとは対照的に明るく切り返してみる。
「それはしょうがないわ。猫はそういう生き物よ。私も昔、飼っていたから」
といっても神子と呼ばれるさらに前の話だ。レーネは必死に記憶を辿る。
優しくしてくれるのは、大事にされるのは自分が神子だからだ。愛し愛され、愛し合うとは、どういうことなのか。きっと永遠にわからない。得ることもない。それ以前に――。
「私、こんな外見だし」
片眼異色の運命はこの先もずっと背負っていかなくてはならない。無意識に本音が漏れ、レーネは慌てて取り繕う。
「ゲオルクなら、私の助言なんてなくても女性の扱いはお手の物でしょ」
「……そうだな」
膝を抱えて素っ気なく返すと、あっさり返事がある。もうこの話題は終わりだ。
そう思って立ち上がろうとしたレーネだが、不意に力強く腕を引かれ、思わずうしろに倒れ込む。
先ほどと同じくやや湿り気を帯びた草の感触が背中にあって、横を向けば同じように寝転んだゲオルクと目が合う。鉄紺の瞳にじっと見つめられレーネの心臓が跳ねた。
「どうしたの?」
「お前に聞きたいのは、猫の飼い慣らし方だ」
突拍子のない質問内容にレーネは目を瞬かせる。
「あなた、猫を飼うの?」
それは初耳だ。ゲオルクはレーネの問いには答えず、そっと彼女の頭を撫でだす。
「気ままで、気まぐれで、警戒心が強くなかなか心を許さない。なにを考えているのかわからないんだ」
低い声色と真剣な眼差しにレーネはわずかに戸惑う。そこまで深刻になる話なのか。とりあえずゲオルクとは対照的に明るく切り返してみる。
「それはしょうがないわ。猫はそういう生き物よ。私も昔、飼っていたから」
といっても神子と呼ばれるさらに前の話だ。レーネは必死に記憶を辿る。