俺はお前しか好きになれない。
痛い視線が私に刺さるけれど、その表情は怒りというか、不思議に近いものだろう。


え、あの人誰?
どうして話しかけてるの?
って気持ちが伝わってきた。



「朱音いっしょに帰ろう」




女の子の輪から抜けて、私の元に近寄ってこようとするけれど、ここでいっしょに帰ったら明日から平和に過ごせなくなってしまうかもしれない。



だって私たちが付き合ってることを知っている人はほとんどいないのだから。釣り合わない私たちは公認のカップルじゃない。

身の程知らず、滑稽だ。





「やだ……っ、やだ……こないで……っ」



私は思いっきり叫んで走り出す。私が可愛かったら声をかけられたのに。いや可愛かったら秘密にする必要なんてない。

耳を塞いでも聞こえてくる声がとにかく痛かった。





「ねぇあの子だぁれ?」
「咲夜くんあんな子好きなの?」
「今年も受け取って〜〜!!!」





女の子が咲夜に想いを伝えている声なんて聞きたくないし、そんなところを見たくもない。だから私は無我夢中で走る。

あの子たちと咲夜の距離が近づく、そしてそれと反比例するように私たちはまた離れていく。
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