嘘の仮面
「あいつ…誠はああ見えて結構鋭い。さりげなく俺らのこと探ってるしな」
「あと、抑えてるだろうけど、たまぁに普通じゃない気配出てるしね」
2人は続けて否定した根拠を告げる。
それに下っ端は「なるほど」と相槌を打った。
そして、ずっと聞いていた彼──瑠衣が口を開く。
「…お前らは気づいてなかったけど、ボウリングをしてる時に離れた席にいた“餓鬼”の下っ端がこっちを見てた」
その言葉に理人と唯斗は声を出さずに軽く目を見開いて驚いた。
そしてさらに続いた言葉に今度こそ盛大に驚いた。
「…そんで、あいつ、たぶんそのことに俺より早く気づいてた」
「は?」「えっ!?」
聞いていた下っ端も同時にめっちゃ驚いた。声はかろうじて抑えた。
「初めからなんとなく分かってはいたけど、やっぱあいつ只者じゃねぇな」
「瑠衣より先に気づくって相当だよね」
「…下がっていい」
「はい。失礼しました」
下がった下っ端は幹部室から出るなり、人知れず笑みを浮かべる。
(さっすが誠さん、うまいことやってる)
鼻歌を歌いたくなるほど上がった気分は、廊下の先にいた同じ下っ端を視界に入れたことですぐに引っ込んでいったが。
そうして、本人に知られずに報告会は終わりを告げた。