嘘の仮面
痛みに呻いたから誤魔化せるとは思ってないけれど、あえてすっとぼけてみる。
もしかしたら、知らないふりをしてくれるかもしれない、そんな望みをかけて。
「…誤魔化すな。お前、自分の背中に汗滲んでんの、気づいてるだろ」
「……さぁ」
「……はぁ。とりあえず、昼間みたいに何でもないように過ごすのはやめろ。悪化する」
「…そうだねぇ、悪化するねぇ」
でも、我慢できる痛みだし、いつもよりこの痛みはマシだから。
だから、大丈夫。
そんなことを思いながら、忠告を受け入れた、ふりをした。
置いて行かれるよ、と瑠衣に声をかけてから俺は後に続いた。
…さっき掴まれたせいで、見て見ぬふりをしていた腕の痛みはひどく鈍く痛みだした。