嘘の仮面
「……ぁ」
「ん? どうしたの? 何かいいものでも見つけた?」
「…ううん、何でもない。 見間違いだったみたい」
とあるものが店頭に並んでいるのを見て、思わず声が漏れた。
記憶にあるものと完全に一致しているかは遠目からじゃわからないけど、おそらくそれだった。
寄ってもらおうかと思ったけど、たぶん今のままでも少しだけ表情がないと思うから、やめた。
また一人の時でものぞいてみよう。
…その時まで残ってればいいんだけど…。
「……誠」
「…ん、どうしたの?」
「…さっき見てたやつ、本当に買わなくてよかったのか」
「…うん、また今度一人で来た時にのぞいてこようかなって思って」
「…買ってやろうか」
「いい。 あれがもし俺が探してるものだとしたら、俺が買わないと意味がないから」
「…そうか。 でも見てくるだけ見てきたほうがいいと思うぞ」