一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る
3.強引な夜のファーストキス

***

 手が震える。

 テーブルに置かれた紅茶をソーサーごと持ち上げたはいいものの、指が震えるせいで陶器がこすれカタカタと小さく鳴る。右手でカップのハンドルを掴み、そっと宙に浮かせた。

 顔の筋肉がこわばって無理に上げた頬が痙攣する。せっかく張りつけている笑みが、今にも剥がれそうだ。

 本邸のリビングは、以前、雅臣に連れられて入った部屋とは趣がまったく違った。天井からガラスのシャンデリアが吊られていて外国のお城みたいな雰囲気は変わらないけれど、無垢フローリングに広げられた絨毯の模様はシンプルでソファもテーブルも洗練されている。壁が白で統一されているせいか部屋全体が明るく、現代的な様相だった。

 普段は現代のイギリス貴族が住んでいると聞かされたら、そうなんですかと簡単に納得してしまいそう。

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