一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る
壁に作りつけられた暖炉を見やって、ため息が出る。世界が違いすぎて、まるで映画の世界に紛れ込んでしまったみたいに違和感が凄まじい。これならまだ、雅臣邸の方が現実的な気がした。
「それで、お式はいつになさるの?」
ショートヘアから覗いた耳にパールをあしらった上品なイヤリングがきらめく。透明感があってうつくしく、どこから見ても三十代のその女性は、驚いたことに雅臣の母親らしい。
「そうですね。年内には」
短く答えた雅臣は、ずいぶんとよそよそしかった。自分の母親に対して敬語だし、上流階級の人にとっては、自分の親といくらか距離を取るのが普通なのだろうかと不思議に思う。
それにしたって、この空気はどうにかならないのかな。