一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る
私のとなりに座った雅臣は口調こそ丁寧なものの、不遜な態度を隠そうとしない。
正面のソファに彼の母親――つまりは二條家当主のご婦人である清香さん、そのとなりのひとりがけに父親でありこの屋敷の当主である二條公親さんが座っているのに、雅臣は最初から彼らと目を合わせようとしなかった。
顔合わせをするからとこの部屋に連れてこられたときには、脚の震えが止まらなかったけれど、今は別の意味で震えが止まらない。
『瀬戸口愛さんです。彼女と結婚します』
私のことを紹介した雅臣は、とても事務的で淡々としていた。了解を得るのではなく、『結婚します』という断定的なセリフに呆気に取られたけれど、彼の父親の反応にも驚いた。
『そうか』
そのひと言で終わり。私の顔を一瞬見ただけだった。