一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る
ロマンスグレーの頭髪に四角い輪郭の彼は、目もとが雅臣によく似ている。灰色に染まった凛々しい眉は不機嫌そうに寄っていて、そのくせ目じりに浮かんだシワはやさしげだ。
終始無言の彼は、自分の家に嫁入りする娘がどういう人間なのか、気にならないのだろうか。それとも雅臣が言っていた通り、次男が結婚さえすればその相手は誰でもいいのだろうか。
壁に飾られた幾何学模様のアートパネルを眺めながら、あるいは、と考える。
私のことなんてとっくに身辺調査済みで、とくにプラスになることもない代わりにマイナスにもならないと判断して、とりあえず良しとしているのかもしれない。