一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る
年下のせいか、善くんは二條家の人間であることを忘れそうになるくらい話しやすい。
彼自身まだ若くて威厳というものはまったくないけれど、それがかえって親しみやすさを生んでいる。彼からも高貴な輝きを感じるけれど、雅臣や彼らの父親が放つものとは重みのようなものが違った。
「それにしても、なんでまた雅兄と結婚することになったの? 前から付き合ってたの?」
悪気のない笑顔を向けられて、言葉に詰まる。笑みを返しながら、心のなかでは黄色信号が点滅していた。
どうしよう。どう答えればいいの。
助けを求めるように雅臣に目を向けるけれど、彼は伊都さんと話していて私の視線に気づかない。
頬の筋肉が今度こそ引き攣りそうになる。善くんが不思議そうに首をかしげたとき、声を出したのは思いがけない人物だった。