一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る
「善。パソコンの調子が悪いんだ。みてくれないか」
そう言って立ち上がったのは、二條公親だ。双子のおかげで和らいでいた室内の空気が一瞬で引き締まる。灰色が混じった眉を少しも動かさずに、二條家の当主は私を見下ろした。
「私はこれで失礼する。愛さん、ゆっくりしていきなさい」
「あ、ありがとうございます」
なんていう威圧感だろう。視線を向けられただけでぴしりと背筋が伸びる。
でも、私の心を苛んでいた焦りや頬のこわばりは、いつの間にか消えていた。
思わず神様に感謝してしまう。
二條家の当主は、まるで私が困っているのを見かねて助け舟を出してくれたようなタイミングで席を立ってくれたのだ。
善くんを伴って二條公親が出ていくと、室内の空気はわずかに緩んだ――と思ったのに、今度は雅臣が立ち上がった。
「俺たちもそろそろ行くぞ」
「えっ」