一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る
私に視線をよこしながら彼女がそう付け足すと、雅臣は「勝手にしろ」と話を終わらせてしまった。
いやいや待ってよ。妹さんに根掘り葉掘り聞かれたら、どう躱せばいいの。
さきほど片割れの善くんから無邪気に質問されたことを思い出して不安になる。それでも雅臣は伊都さんを止めず、結局彼女は私たちと一緒に雅臣邸の玄関をくぐった。
「ここに来るのはいつぶりかしら。楓はいないの?」
「週末はお休みされているので」
「ああ、そうだったわね」
伊都さんは迷わずリビングに向かうと、当然のようにソファに腰を下ろした。
「じゃあ、俺は出かけてくるからな」
「えっ⁉」
雅臣は携帯でどこかに電話をかけながら、私たちを見下ろした。
「十九時くらいには戻る。伊都もほどほどにしとけよ」
「え、ちょ、雅臣」