一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る

 頭の中がごちゃごちゃなのに、そのまま突き進んではいけない気がした。なにも考えず勢いに任せてしまう方法もあるとは思う。でも、私は雅臣の心を知りたい。

 あなたは、私のことをいったいどう思っているの?

 一番聞きたいことは口にできないまま目を伏せると、ふっと小さく笑う声がした。

「『やめて』じゃなくて、『まって』なんだな」

 口角を上げて、彼はうすく微笑む。どことなくうれしそうな表情に、また胸がしめつけられた。

「わかった」

 身を起こしながら雅臣は私の手首を引っ張る。体が引き寄せられ、広い胸にすっぽり包まれた。至近距離で感じる体温と匂いに、私の胸は高鳴りっぱなしだ。

「今はこれだけで我慢してやろう」

 整った顔を傾けて、雅臣はゆっくり唇を寄せてくる。

 避けようと思えば避けれたはずだ。でも私は動かなかった。

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