一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る
4.極上スイートルームの一夜
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分厚いガラス窓の向こうには都心のビル群が一望できた。ダークブラウンを基調にした室内には大きなソファやベッドが配置され、高級感あふれるインテリアで統一されている。
ここが病室だなんて、今でも信じられない。
『まるでホテルのスイートルームみたい』と目をキラキラさせていた母が転院してきたのは一週間前、雅臣が病院に挨拶に来てくれた翌日のことだった。
「こんな立派な病院の院長とお知り合いだなんて、雅臣さんて本当にすごい方なのねぇ」
ベッドに寄りかかって穏やかに笑っている母に、雅臣は曖昧に笑って答えている。
母をずっと転院させたいと思っていたけれど、口に出したことなんて一度もなかった。それなのに、雅臣はあっというまにこの病室を手配してしまったのだ。まるで私の心を見透かしていたみたいに。