一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る

「だって高層ビルが嫌いなんでしょ? だからひとり暮らしを辞めたって」

「嫌いだが入れないわけじゃない。落ち着かないだけだ。だから高層ビルでも仕事はできる。ただゆっくり寝れないから生活はできないってだけだ」

「ふうん。じゃあこっちで一緒に外を眺めましょうよ。東京湾が見えてなかなかの景色よ」

 見るからに苦い顔をする雅臣を見て、笑ってしまった。

「やっぱり、高いところが怖いんじゃない」

「断じて違う。……いいだろう。そこまで言うなら外の景色を眺めてやる」

 そう言って彼は長い脚をゆったり組んだ。

「言ってることとやってることが噛み合ってないようですが? 雅臣サン」

 こちらに来る気配のない御曹司をじとりと見ると、彼は「ふん」と胸を反らせた。

「ここからでも景色はしっかり見える。なるほど、湾が見えるな」

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