一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る
高級感あふれる室内でゆったりとソファに落ち着いている雅臣は、どこから見ても完璧な紳士だ。身にまとうオーラも実際に身に着けているものも、すべてが一級品。そんな姿を目の当たりにすると、家柄や身分といったものの違いをはっきりと突きつけられたような気分になる。
地上にへばりつくように生きてきた私とは違う、雲の上の人。
少しせつない気持ちになっていると、室内のドアがノックされた。
「失礼します」
入室してきたのは白衣姿とスーツ姿の男性が一人ずつだった。坂城さんの部下にあたるスーツの男性が、雅臣のそばまでやってきて小さく告げる。
「準備が整いました」
「そうか。愛、恵美さんを」
「はい」
雅臣に促され、私は病室に用意されていた車いすをベッド脇に運ぶ。
「あら、どこかに行くの?」