一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る
「そうよ。お母さんにちょっと見てもらいたいものがあるの」
白衣の男性に手伝ってもらいながら、不思議そうに首をかしげる母を車いすに座らせた。
「なにかしら」
廊下を進みながら、母は胸に手を当ててつぶやく。プレゼントの箱を手渡された少女のような屈託のない表情を見つめながら、私は少しだけ緊張していた。
ここのところ、母はずっと調子がいい。雅臣が挨拶に来てくれた日から、笑顔が絶えないし一見すると元気そうだ。
それでも体の方は着実に弱っている。
病院が変わって出される食事が豪華になり、舌平目のムニエルやらツブ貝のクリーム煮やら、普通のレストランと変わらないレベルのものが提供されるようになった。おまけにおやつの時間には有名店のスイーツと様々な種類の紅茶まで用意される。