一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る
エレベーターを降りて案内されるまま扉をくぐると、二面が窓に面した巨大な会議室のような場所に出た。
床から天井までがガラスになっている大きな窓から、光がたっぷりと注ぎ込んでとても明るい。絨毯敷きの床には机も椅子も置かれていなかった。百人は収容できそうな広い空間にあるのは、ステージに立てられた巨大な絵だけ。
私の身長を超える大きさの絵には緋色の布がかけられていて、それと知らなければ絵画だとはわからないようになっている。
「まあ、なんだかすごいわね」
白衣の男性が車いすをステージの正面まで進めた。
なにも知らない母を見つめながら、心臓が忙しなかった。
彼女がずっと見たいと願っていた、生前の父が唯一描いた、母の絵。