一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る
「ふふ、よく似ているわよね。でもこれは二十五年前の私なのよ」
痩せた腕を持ち上げ、細い指でゆっくりと絵を差し示す。
「あなたは、こっち」
女性の腕の中で眠る赤ん坊は生まれたばかりだろうか。髪の毛も眉も薄く、頭の形がはっきりとわかる。
「この赤ん坊が、私……」
「愛」
名前を呼ばれたのだと思い振り返ると、雅臣はまっすぐに絵を見つめていた。
「この作品のタイトルだ。『愛』。親父が祖父から相続した財産の管理リストにそう書かれていたらしい」
家賃代わりに渡されたこの絵は、グループ会社から二條家へと渡り、前当主が亡くなったときに雅臣の父親の財産の一部になった。
「愛……」
愛する妻へ。愛する娘へ。